少し前の日経ビジネス誌で「伸びる会社は全員力」という特集がありました。その中で、神戸大教授の金井壽宏氏と東京大准教授の中原淳氏の対談記事が掲載されていましたが、特に興味深く読みました。
対談の中で2008年に、中原氏も監修し富士ゼロックス総合教育研修所が行った「他者との“かかわり”が個人を成長させる」というテーマに関わる調査について触れています。いわく、職場での他者とのかかわりのなかに、「業務支援」「内省支援」「精神支援」の3つの支援が存在することが判明したとのことです。
1.業務支援:業務に必要な知識やスキルを提供してもらったり、業務をスムーズに進められるよう取り計らってもらったりすること。
2.内省支援:自分自身を振り返るきっかけを与えてもらったり、自分の態度を変容すするきっかけを与えてもらうこと
3.精神的支援:仕事の息抜きや心のやすらぎを与えてもらうこと
確かに自分の会社生活を振り返ってみると、それぞれの職場で上司、先輩、同僚等とのかかわりの中で、上記の支援を意識的、無意識的に受け、成長してきたとの思いがいたします。
「業務支援」は具体的な動きからイメージしやすい支援ですが、「内省支援」「精神的支援」といった支援もそういえば会社生活の局面、局面で得てきたなとの思いがあります。特に、思い出深い、良い仕事ができたと思える職場は、総体的に上記3つの支援が自然に組織内に醸成されていた印象があります。組織内のメンバーが緊密な関係を維持することにより、相互影響、相互支援がなされていたと思われます。
この3つの支援の話から、次のことを思い出しました。初めて管理職になり、最初の管理職研修で「管理職の3つの役割」という話しがありました。曰く
1.組織目標の達成
2.組織の活性化
3.部下の指導育成
管理職に求められるものはもちろん、「組織目標の達成」が第一義であるが、それだけではないとの話でした。組織のメンバーが生き生きと動き、その組織にいることでメンバーが成長していく良き組織風土の醸成、人材の育成も管理職の使命である。短期の組織目標達成を追うあまり、組織および、メンバーが疲弊してしまっては、いくら組織目標を達成しても、永続性・継続性という観点では管理職の責任を完全にまっとうしたとは言えない。その話は非常にインパクトが強く、今でもこの指針は私のなかで大きなウエイトを占めています。
この管理職の3つの役割と先ほどの3つの支援には相関性があると思います。組織の活性化、人材育成といった問題は職場でのかかわりを通じての良き支援が絶えず生まれるなかで実現されていくものと思います。それがうまくいっているとき、組織目標も結果として達成できる確率が高い、のではないでしょうか。
近年の職場のフラット化、成果主義の導入等は、こと「組織目標の達成」・「個の自立性」という観点から目的合理性に適っている動きかもしれません。しかし、「支援」という観点からみると人間関係の緊密さが以前より薄れ、逆に個の成長といった観点では徐々にボディーブローとなって、廻り廻って組織目標の達成にも影響を与えるというマイナスの面もはらんでいるかもしれません。職場のフラット化・成果主義をより有効にする、組織の活性化とは何かについて考えることが大切と思います。
人材紹介を日々の仕事としている私としては、そんな観点も絶えず意識しながら、仕事を行っていきたいと常々思っております。
(キャリアクリエーション事業部 エグゼクティブ・キャリアコンサルタント 前田 富士夫)